お知らせ
・第29回ハートセンターフォーラムを開催いたしました
延期になっておりました第29回ハートセンターフォーラムを、2020年10月20日に開催いたしました。世情を鑑み初のWEBでの開催となりましが、多くの皆さまにご視聴いただき、ご質問も多数いただき活発な講演会となりました。ご参加いただき、ありがとうございました。次回の第30回は2021年2月頃の開催を予定しております。
・日本不整脈心電学会認定不整脈専門医研修施設認定を更新しました
・下肢静脈瘤のレーザー治療が始まります(心臓血管外科外来、水曜日)
・経カテーテル大動脈弁置換術のお知らせ
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI: transcatheter aortic valveimplantation, またはTAVR: transcatheter aortic valve replacement)が、東京都文京区本郷の順天堂医院心臓血管外科で始まりました。当科外来でもご相談を受け付けております。(心臓血管外科外来、月曜日、木曜日)
科のご紹介
当科は2008年の開設より地域に根ざした医療を行うと同時に大学病院として教育と研究に進達して参りました。現在は対象疾患の拡充を図り、心臓や血管疾患を総合的に治療可能なハートセンターとして循環器内科と共に診療を行っております。
心臓血管外科治療が近年さらなる進化を続ける一方で、高齢化に伴う病態の重症化、複雑化は治療戦略に様々な選択肢を加えています。私どもはこうした最新かつ最良の医療を提供するために循環器、糖尿病、腎臓病の専門医や麻酔科を始めとする各診療科、臨床工学室と緊密に連携しています。
高水準の医療を提供することで、患者さんだけでなくご紹介いただいたホームドクターの先生方にも満足していただけるよう最善を尽くしてまいります。どうぞお気軽にご相談下さいますようお願い申し上げます。
取り扱う主な疾患
虚血性心疾患
狭心症などの冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス術では、心臓を停止せずに手術を行うオフポンプCABG(OPCAB; Off-pump CABG)を第1選択とし周術期の合併症を軽減させると同時に、エヴィデンスに基づいた良質なバイパスグラフト選択により予後改善に取り組んでいます。また重症冠動脈虚血により引き起こされる虚血性心疾患の治療として虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術、心室瘤に対する左室形成術も行っております。
弁膜症
当科ではすべての弁膜症に対する手術を実施しております。特に僧帽弁閉鎖不全症や高齢化より増加している大動脈狭窄症に関しては治療成績の向上に伴い手術時期を含む治療戦略も日々変化しております。したがって患者さん一人ひとりに合わせてエヴィデンスに基づく治療方針を立てる事が重要と考えております。僧帽弁閉鎖不全症では僧帽弁形成術を積極的に行い良好な成績を納めています。
大動脈疾患
胸部大動脈瘤、大動脈解離に対する手術を行っています。出血が見込まれる手術では術前からの自己血貯血を行い、他家輸血使用を軽減する取り組みも行っています。身体への侵襲の少ないステントグラフトによる胸部大動脈瘤血管内手術(TEVAR; thoracic endovascular aortic repair)も2014年より実施施設認定を取得し、当院で行っております。身体への侵襲の少ない血管内治療を当院で受けて頂く事が可能となっております。大動脈に瘤があると言われた方は是非一度ご相談ください。
末梢動脈疾患
腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症に対する手術を実施しています。ステントグラフトによる腹部大動脈瘤血管内手術(EVAR; endovascular aortic repair)は2013年に実施施設認定を取得し、当院で行っております。指導医が常勤する認定施設としてステントグラフト実施基準管理委員会のホームページ (http://stentgraft.jp/pro/facilities/) にも掲載されておりますので、お腹の動脈に瘤があると言われた方は是非一度ご相談ください。閉塞性動脈硬化症に対しては人工血管や自家静脈を使用したバイパス手術に加えて経皮的血管形成術と同時に行うハイブリッド治療も実施しております。
下肢静脈瘤
当科では根治性の高いストリッピング手術を第1選択としております。現在レーザー治療は行っておりませんが、小さい切開と特殊な局所麻酔(TLA麻酔)で行う手術は、疼痛も少なく術直後からの歩行も可能であり皆様から高評価を頂いております。原則として2泊3日の入院が必要となります。
・下肢静脈瘤のレーザー治療が始まります。(心臓血管外科外来、水曜日)
診療実績

外来診療
手術などの事情により担当が変わる場合もございます。ご了承ください。
専門外来
弁膜症外来
内容 | 大動脈弁狭窄症に対する最新のスーチャーレス弁を使用した小切開弁置換術や僧帽弁疾患に対する内視鏡下僧帽弁手術も行っています。 |
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診察日 | 月曜日午後、木曜日午後 |
担当医師 | 稲葉 博隆 |
静脈瘤外来
内容 | 疼痛の少なく根治性の高いラジオ波焼灼術を主体に、硬化療法や針穴から行う瘤切除を行っています。 |
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診察日 | 水曜日午後 |
担当医師 | 大野 峻哉 |
大動脈外科外来
内容 | 胸部大動脈瘤、大動脈解離に対する開胸手術、血管内治療(ステントグラフト)やマルファン症候群に対する自己弁温存大動脈基部置換術を行っています。腹部大動脈瘤に対する血管内治療(ステントグラフト)の場合は水曜日にお越しください。 |
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診察日 | 月曜日午後、水曜日午前、木曜日午後 |
担当医師 | 稲葉 博隆、大野 峻哉 |
冠動脈外科外来
内容 | 狭心症、心筋梗塞や川崎病に対する外科手術を行っています。心拍動下(オフポンプ)冠動脈バイパス術の経験を積んだ医師が、エヴィデンスに基づいた冠動脈血行再建を行います。 |
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診察日 | 月曜日午後、木曜日午後 |
担当医師 | 稲葉 博隆 |
※かかりつけ医からの紹介状(診療情報提供書)をご持参ください。
※紹介状をお持ちの方のみ、初診のご予約を紹介初診予約センターにて受け付けております。なお、初回受診時は上記担当医師ではない場合もございますので、ご了承ください。
入院診療
私たち心臓血管外科は、特に循環器内科・救命救急センターとの連携を密にして、日々の診療を行っております。また糖尿病や腎不全における専門医や薬剤部、理学療法士と連携を行い、より安全に総合的な治療を行っております。 入院前に必要な検査を済ませ、手術の2~6日前に入院して頂きます。入院後に手術後に行っていただくリハビリテーションの練習を行います。 手術1~2日前に手術に対する詳しい説明をさせていただきます。(このときはご家族の皆様にも参加して頂きたく存じます。)
主な手術の経過
冠動脈バイパス術
入院期間:手術後7~10日、手術時間:5~6時間
弁膜症手術
入院期間:手術後7~10日、手術時間:5~6時間
胸部大動脈手術
入院期間:手術後10~14日、 手術時間:8~10時間
腹部大動脈手術
入院期間:手術後7~10日、手術時間:4~5時間
末梢血管手術
入院期間:手術後7~10日、手術時間:3~5時間
臨床研修プログラム
目標・理念
順天堂大学附属浦安病院心臓血管外科の理念は、‘高度先進医療と地域医療の融合’です。心のかよった医療を行う事ができる医師の育成と、大学病院ならではの臨床と研究の両脚の上に育成される、高度医療専門医(academic specialist)の育成に全力を傾注しています。地域医療に対する情熱を持ち、卓越した技術を持つ外科医として、また科学者として世界をリードする医師の育成に力を注いでいます。また、後期研修後には教育者としての道も歩むことができるように、研修時より教育にも積極的に参加してゆく事をモットーとしています。
診療科概要
臨床研修においては、ハートセンターにおける循環器内科の協力の下、循環器領域を幅広く研修するなかで、御茶ノ水の順天堂大学順天堂医院と連携し、心臓血管外科領域の全てに渡る研修を行うなかで、専門診療科ならではの最先端医療に基づく研修を行う事ができます。初期研修から専門医を目指す後期研修まで一貫した外科教育を行っております。また、後期研修終了時までの研修目標に到達することだけでなく、世界に通用する一流の外科医を志す医師としての人間教育を研修の大きな目標に掲げ、情熱ある研修医を募集しております。
研修プログラム責任者 : 稲葉 博隆
当科の専門分野は、(1)冠動脈外科、(2)大動脈外科、(3) 心臓弁膜症外科、(4)末梢血管外科 が主体です。また、循環器外科救急では、大動脈解離、大動脈瘤破裂、急性心筋梗塞、不安定狭心症なども対象となります。教室では、循環器疾患の治療を循環器内科医、救急救命センターと連携し治療を行っております。また周術期における合併疾患や管理に関しては、糖尿病専門医や透析医、さらに薬剤部やリハビリテーション部との関わりを密にし、大学病院におけるチーム医療を学ぶ場として極めて重要な役割を担っています。 また外科医は技術職であり、若き外科医の育成に際しては外科手術手技のトレーニングがきわめて重要であると考えております。
認定医・専門医
外科認定医、専門医
後期研修(シニアレジデント)プログラム
*順天堂大学付属浦安病院における研修
心臓血管外科1年次
心臓血管外科医としての基礎知識の習得、および外科基礎手技の習得を行います。
心臓血管外科2年次
外科一般に関する研修
年間症例数約200例にて1年次に習得した知識・技術の確立を目標とします。
心臓血管外科3年次
周術期管理の応用、心臓血管外科基礎手術の開始
末梢血管手術・腹部大動脈手術
心臓血管外科4年次
周術期管理の確立、心臓血管外科基礎手術の習得
後期研修終了時には
一人で開胸ができること。
末梢血管および腹部大動脈瘤手術を行う事ができること。
病棟における管理の指導ができること。
研究、学会活動および論文作成が主体的にできること。
以上を目標としております。
スタッフ紹介
科長
稲葉 博隆
(教授)
経歴 | 平成元年 東京大学卒 |
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専門 | 成人心臓血管外科一般 |
資格 | 日本外科学会外科専門医・指導医、三学会構成心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医・修練指導者、日本循環器学会循環器専門医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、 日本循環器学会、日本心臓病学会、日本冠疾患学会、日本不整脈学会 |
常勤医師
職位 | 氏名 | 出身大学・専門分野・その他 | |
准教授 | 梶本 完 | 帝京大学卒(平成13年) 【専門】虚血性心疾患、オフポンプバイパス術、弁膜症、胸部大動脈疾患、低侵襲心臓手術(MICS) 【資格】日本外科学会専門医・指導医、三学会構成心臓血管外科学会専門医認定機構心臓血管外科専門医、DaVinciロボット心臓手術実施認定医 |
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助手 | 大野 峻哉 | 金沢大学卒(平成24年) 【専門】成人心臓一般、大動脈瘤、静脈瘤 |
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学会活動/認定施設など
外科医として患者さまに最善の手術を提供できることを至上の目標としております。しかし、未来の患者さまのお役に立てるように、研究活動がそれと同じくらい大切なことだと考えております。当科では臨床だけではなく、教育・研究面でも一流のものを得られるよう、忙しい合間をぬって学会活動・研究活動にも力を入れております。そのため、学会報告、論文執筆などの活動を奨励しております。
2019年
- 稲葉博隆:冠動脈バイパスと動脈硬化(動脈硬化性疾患) 浦安市民大学 講義、浦安、2月19日、2019
- 佐藤友一郞:ペースメーカリード感染による感染性心内膜炎の一例 第179回日本胸部外科学会関東甲信越地方会、口演発表、東京、3月2日、2019
- 稲葉博隆:臓器不全患者に対する外科・管理研究会、座長、東京、11月9日、2019
- 佐藤友一郞:術後管理に難渋した腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術の一透析例 臓器不全患者に対する外科・管理研究会、口演発表、東京、11月9日、2019
- 中村博:下肢静脈瘤の診断と治療 市川市医学会、口演発表、市川、11月9日、2019
2018年
和文総説
- 稲葉博隆 萩原論文に対するEditorial Comment 心臓 Vol. 50 No.10, 1136-1137, 2018、日本医学出版、東京
学会・研究会発表
- 稲葉博隆 座長 ポスターセッション(196)「心臓-2」 第118回日本外科学会定期学術集会、東京、2018年4月7日
- 中村博 Najuta 術後のエンドリークに対して大動脈バンディングを行った一例 第4回千葉県大動脈ステントグラフト研究会、2018年7月7日
- 佐藤友一郞 左鎖骨下動脈瘤切除術において再建に工夫を要した一例 第178回日本胸部外科学会関東甲信越地方会、東京、2018年11月3日
認定施設
- NCD参加施設
- JACVSD参加施設
- 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構規則に規定する基幹施設
患者さまとご家族のみなさまへ
心臓血管外科の手術に求められるものは
1.安全性の高い正確な手術
2.早く患者さんが元気になること
3.手術後も末永く元気で日常生活を送ることができること
であると考えております。
私たちは、患者さんとご家族の皆様に満足していただけるよう、より低侵襲な(体の負担が少ない)手術方法を取り入れております。また循環器内科・麻酔科・救命救急センターをはじめ、糖尿病や腎不全における専門医や薬剤部、理学療法士と連携を行い、より安全に総合的な治療を行っております。入院中、また退院後の生活や療養に関する悩み事やご相談につきましても、医療福祉相談室、看護支援室と密接に連携して、一人一人の患者さんやご家族のどなたにも心配や不安のないよう、対応しております。どうぞご安心ください。
“専門家が求める最善の医療と、自分たちの一番大切な人を思いやる気持ち。”
私たちは、自分ならばどのような医療を受けたいのか、ということをいつも考えて、安全な医療を皆様に受けていただけるように努力いたします。また皆様が笑顔で満足して退院していただけるように、心のこもった医療をさせていただきます。
地域に密着した医療を行うべく、手術の後に関しても、ホームドクターの先生方との連携を密にし、皆様が快適に医療を受けることができるように精一杯努めさせていただきます。
紹介してくださる先生方へ
当院では最新医療を取り入れ、 安全・確実かつそれぞれの患者さんに適した治療を選択し、早期の社会復帰をモットーに治療に取り組んでいます。そして、患者さんの負担が少ない低侵襲な医療を心掛けております。
その結果、冠動脈バイパス術では、人工心肺を使わないオフポンプCABG(OPCAB; Off-pump CABG)を第一選択としております。また、病気によっては小切開(10~15cmの傷)で心臓手術を行っております。
心臓弁膜症手術では、僧帽弁に関しては積極的に弁形成術を行っております。また、石灰化の著しい大動脈弁に関しては、超音波手術器を用いて手術を行っております。ご高齢の患者さんには生体弁を使用した人工弁置換術を行い、手術後における内服薬の合併症を減らすように心がけております。また不整脈(心房細動・心房粗動)の手術も積極的に行っております。
近年は大動脈の病気が増加しております。特に胸部や腹部大動脈瘤および大動脈解離には力を入れて治療にあたっております。出血が少なく、短時間で手術を終え患者さんにとって体への侵襲が少なくなるよう、より良い手術を提供させていただきます。
身体への侵襲の少ないステントグラフトによる胸部大動脈瘤血管内手術(TEVAR ; thoracic endovascular aortic repair)も2014年より実施施設認定を取得し、積極的に行っております。
さらに虚血性心疾患や大動脈解離、胸部および腹部大動脈瘤(破裂症例や切迫破裂症例も含めて)に対しては、24時間受け入れられる様に緊急体制をとっております。緊急時には一刻も早く手術室に運ぶことが患者さんの生死を左右すると考えております。そのために私達は救急医やコメディカルスタッフと共に、チームワークと最新技術を駆使して緊急症例に対しても治療にあたっております。
ご紹介いただいた患者さん又ご紹介いただいた先生方が心から満足していただける医療を提供するよう最善を尽くします。
研修医の先生へ
当病院における心臓血管外科手術の特徴として最先端の技術を積極的に取り入れるとともに患者さんにとってより低侵襲な医療を心がけております。その結果、冠動脈バイパス術であれば心臓が動いたまま血管吻合を行うOPCAB(off-pump coronary artery bypass)や弁膜症疾患であれば弁形成術(人工弁に置換するのではなく患者さん自身の弁を修復することで弁の機能を取り戻す手術)を取り入れております。
また近年増加傾向にある大血管手術や緊急手術に対しても積極的に手術を行っております。このように高いレベルでの手術手技や診療に携わることが出来ます。
心臓血管外科または外科系一般に興味をお持ちの方、または循環器内科を将来専門にと考えている方、それ以外にも最先端の手術、周術期管理を垣間見てみたい方など、皆さんの参加を心よりお待ちしております。