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診療科・部門のご紹介

MEDICALCARE

お知らせ

2022.4.1 口腔ケア室を開設しました。
     ※当院では、入れ歯の作製や虫歯治療などの一般歯科治療は行っていません。

室長あいさつ

室長
佐々木 信一
(呼吸器内科 教授)

このたび、入院患者さんに対して、術後の合併症や有害事象を回避し、入院生活の質的向上と原疾患の早期回復を図るため、「口腔ケア室」を開設しました。
口腔ケアとは、口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションによりQOLの向上をめざした科学・技術です。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔乾燥予防などがあります。
口腔ケアの目的は口の中を清潔にするだけでなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持することであり、さらに、全身状態の改善と、全身疾患の治癒・予防を図ることです。(図1)
具体的には以下のものなどが挙げられます。
①口腔内の清潔と潤いを保つ。
②誤嚥性肺炎をはじめ口腔内細菌による感染の予防。
③粘膜ケアにより咳反射・嚥下反射を高める。
④口腔機能を維持向上することでQOL向上につなげる(食べる、会話、笑顔)。
また、大学病院における口腔ケアの目的には、主に術後合併症としての肺炎予防や、悪性腫瘍の放射線療法・化学療法に際して起こりやすい口腔粘膜炎や顎骨壊死といった副作用を予防することが挙げられます。(図2)
今後、口腔ケア室を潤滑かつ活発に運営し、より高度で良質な医療を患者さんに届けられるよう精一杯精進して参ります。


図1



図2


スタッフ紹介

職種 氏名  
歯科医師 住友 伸一郎
歯科医師 山岡 真太郎

他、歯科衛生士

診療内容

➀周術期口腔機能管理

周術期口腔機能管理とは、簡単に言いますと、「入院治療を受けられる患者さんの口腔の健康を守ること」です。入院が決まった時点で必要な歯科治療を行うだけでなく、歯科医師や歯科衛生士による専門的口腔ケアを開始し、退院までこれを続けます。これにより入院期間を通して、お口の中をきれいに保つことができ、歯茎が腫れて膿を持ったり、舌や頬の粘膜が荒れたりすることを防止できます。さらに、手術などに伴う全身の免疫抵抗力低下に加えて、口内の「ばい菌」が引き金となって発症する内臓の病気を防止することもできます。加えて、入院や手術の原因となった病気を早期治癒に導くことが可能となります。口腔ケア室では周術期口腔機能管理の遂行を第一の目標にしています。


②高齢者への対応

ご高齢の患者さんの中には、噛む力や唇あるいは舌の動きといった口腔機能が低下して、食事がうまくできなくなる方もいらっしゃいます。このような状態はオーラルフレイルと呼ばれ、要介護や寝たきり状態につながる前兆と言える状態です。当室では、食事がうまくできずに困っておられる入院患者さんの口腔機能を精密に検査し、リハビリテーション科と共同して口腔機能の回復を目指し、寝たきりの防止に努めます。

③骨粗しょう症への対応

高齢化が進むと、骨粗しょう症を発症する患者さんも多くなります。最近は骨粗しょう症の治療に大変有用なお薬ができていますが、一部の骨粗しょう症治療薬では副作用として、歯周炎や抜歯、入れ歯による傷などから顎の骨に「ばい菌」が侵入すると、骨が腐ってしまう顎骨壊死と呼ばれる状態になる場合があります。口腔ケア室では整形外科などの先生方と連携をとり、できるだけ抜歯などの外科処置を行わなくても良いように、また、入れ歯などの適合を改善し傷がつかないように口腔内のコンディションを整えて、お口の状態を管理していきます。抜歯が必要となった場合には、十分に感染をコントロールしつつ抜歯を行うとともに、慎重に経過観察することで、顎骨壊死の発症を防止したいと考えています。

④妊婦への対応

妊娠中の女性では、様々なホルモンが胎児を守り、発育を促すために分泌されるようになり、普段とは違った身体の環境になっています。実は、妊娠によるホルモンの変化は口の中、特に歯茎には悪影響を及ぼし、つわりなどが原因で歯みがきがこれまでどおりに行えなくなった場合には、歯肉炎の増悪を招き、場合によっては歯茎に妊娠性エプーリスと呼ばれる「できもの」が発生することもあります。さらに、口腔内が不潔な状態が続くと、気道や血液を介して「ばい菌」が体中に悪影響を与え、胎児の発育を阻害する場合もあると言われています。当室では産婦人科と連携して、妊娠中の方々の口腔ケアも受け入れる予定です。

⑤その他の入院患者への対応

入院中の患者さんが、歯科を必要とするケースは口腔ケアだけではありません。お口の中をきれいに保てていても入院中にむし歯が進んで歯が痛くなったり、入れ歯で傷ができたり、というような歯科的トラブルに遭遇する患者さんもいらっしゃいます。このようなすぐにかかりつけ歯科にかかれない場合に、むし歯の痛み止めや入れ歯の調整といった応急処置を行うことで、安心して入院生活を送っていただけるように努めています。

⑥歯・口腔の損傷(歯の脱臼、顎骨骨折、歯の損傷予防)

転倒や衝突によって、歯が抜けたり、顎の骨が折れたりして救急来院する患者さんもいらっしゃいます。当室ではこのような患者さんのかみ合わせをできるだけ元に戻すように治療のお手伝いをします。外傷で歯が抜けた場合、ミルクに漬けるなど適切な方法で早期に持参いただければ、抜けた歯を元の位置に戻して(再植)固定しておくことで、多くの場合、保存が可能です。

また、顎の骨が折れた場合には、チタンプレートなどで骨折部位をしっかりと固定する前に、噛み合わせが良い位置に顎を誘導する必要があり、ワイヤーなどを用いて上下の歯をしっかり噛み合う位置に牽引誘導します。

さらに、このような歯や顎の損傷を防止するためのマウスガードという器具を作ることも当室の仕事のひとつです。この器具は主にラグビーやボクシングなどのコンタクトスポーツを行うときに使うことが多いですが、全身麻酔下での手術の場合にも、全身麻酔導入時に歯や歯茎を傷つけることなく挿管操作が行えるよう作成することがあります。

⑦顎関節脱臼

あくびなど大きく口を開けたときに、顎が外れて、口が閉じられなくなってしまうことがあります。専門的には顎関節脱臼と呼ばれる状態ですが、通常、自分で元に戻す、すなわち再び噛めるようにすることは不可能で、下あごをうまく誘導して関節を元に戻す整復術が必要となります。また、高齢要介護患者さんでは脳血管障害などに付随して無意識に大きく開口するケースなど、頻繁に顎関節脱臼をおこす場合もみられます。このような場合、バンデージやチンキャップと呼ばれる開口を制限するための器具を用います。

⑧顎関節症

顎関節に長年負担がかかっていると、口が開け難くなることがあります。大きく口を開けようとすると頬のあたりが痛むことや、口の開け閉めの時に顎関節に音が生じるなどの症状は顎関節症の症状です。安静にしていると上と下の歯の間には1~2mmの隙間ができるのが本来の健康な噛み合わせですが、現代人は多くのストレスにさらされており、ついつい噛みしめていることが多くなっています。管楽器の演奏や寝ているときの歯ぎしりなども問題となります。顎関節症は、これらが顎関節や噛むための筋肉に過重負担を起こすことで発生し、ひどくなると顎関節を構成する関節円板や骨にも変形が現れる疾患です。軽症の場合、上下の歯を当てないように気を付けることや、咀嚼筋のマッサージや開口訓練といったセルフケアで治まる場合もありますが、夜間の歯ぎしりなどではスプリントの使用が推奨されますし、関節円板の障害が原因となる場合には、マニュピレーション(顎関節円板整位術)やパンピング(顎関節への注射)といった専門的治療が必要となります。

⑨唇顎口蓋裂

比較的頻度が高い先天異常として唇裂、口蓋裂があります。このような先天異常の治療には多くの専門家が関わります。当室では、出生直後から哺乳の補助や手術に向けた準備を開始します。唇顎口蓋裂では本来一続きになっている上唇から口蓋が最大3つの部分に分かれていて、口と鼻がつながった状態です。このままでは哺乳ができなく、3つに分かれた上あごは放置していると外へ外へと成長していき割れ目が広くなっていきます。そこで、出生後できるだけ早い時期に口の中の形を採り、ホッツ床と呼ばれる哺乳を補助し、上あごの成長をコントロールする装置を作製します。

⑩睡眠時無呼吸

寝ているときに、いびきがひどく、時々息が止まる人がいます。睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる疾患が考えられます。この疾患を放置すると昼間も強い眠気を催し、大きな事故につながることもあり、心臓などの内臓系にも余計な負担がかかるために、既存の病状の悪化をきたす場合もあります。当室では専門家による検査と診断を受けられてから、スリープスプリントと呼ばれる口腔内装置を作製し、治療のお手伝いをすることができます。スリープスプリントは睡眠中、上下の歯に合わせて口の中に入れるだけの簡単な装置ですが、これにより、下あごや舌が後退し気道を塞ぐことを防止できる装置です。