現在わが国では、人口の超高齢化と少子化による社会構造の変化に伴い、全ての世代で「メンタルケア」が重要視されるようになりました。老年人口における認知症、生産年齢人口におけるストレス関連障害をはじめ、全ての世代におけるうつ病などの精神疾患がクローズアップされ、精神科医に対する社会のニーズは急増しています。そして現在、精神疾患は就業障害の原因の6割を超えるようになりました。また、最近減少傾向とはいえ、世界でも屈指の自殺率の問題も続いております。
当科は昭和59年開院時より診療を開始し、現在外来は年間初診患者数約900名、延べ患者数約26,000名に至っております。
当科の診療活動は、外来診療、入院診療と他診療科に入院された方に対する連携(リエゾン)精神医学です。さらに緩和医療も他診療科と連携して担っております。
外来では、総合病院ならではの様々な精神疾患の再診診療、精神科の入口としての初診診察、各種心理検査、MRIやSPECTなどの最新設備を用いた認知症の診断やフォローアップ、ご家族のサポート、セカンドオピニオンとしてのご相談、他診療科との共同治療が必要な方の外来診療を主としています。継続治療の必要な方に関しましては、患者さんのご希望があれば、患者さんがお住まいの地域にある精神科クリニックをご紹介するよう配慮いたします。
入院では、一般病床における軽症精神疾患の短期入院治療、総合病院ならではの身体を合併した患者さんの身体合併症の治療も含めた入院治療、最新のサイマトロンを用いたm-ECT(修正型電気けいれん療法)治療などを行っております。その他、連携(リエゾン)精神医学として一般身体診療科に入院された患者さんの不安や不眠など精神医学的諸問題にも適宜対応しております。また、精神科専門病床での入院加療が必要な場合には順天堂附属病院や関連精神病院へご紹介させていただきます。
患者さんに常に質の高い医療を提供できますよう、日々努力いたして参る所存でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
取り扱う主な疾患
ストレス関連障害
日常生活や社会生活の中には様々なストレスが存在しています。ストレスマネージメントが上手くいかないと、心身のバランスに不調を生じます。身体的には頭痛、めまい、のどの違和感、動悸、胸部圧迫感、胃部不快感、手足のしびれなどが出現し、精神的には不眠、食欲低下、不安・焦燥感などが出現します。
気分障害(うつ病)
集中力と注意力の減退、自己評価と自信の低下、罪責感と無価値感、将来に対する希望のない悲観的な見方、自殺の観念や行為、睡眠障害(途中で目が覚める、早朝に目が覚める)、食欲不振などの症状が特徴です。真面目で、仕事熱心な方にみられます。
認知症
加齢とともに人の名前が出にくくなったり、度忘れを起こしたりすることがあります。これらの90%は正常の老化ですが、10%の人はアルツハイマー病に移行します。物忘れが気になったら、早めに検査を受けることをお勧めします。
診療実績
メンタルクリニック患者数統計(2011年-2020年)
外来診療
診療方針
精神科専用入院病床を持たないため、外来診療が主体となります。
診療体制
診療体制は、外来担当医表をご参照ください。
現在、当科は人員不足のため当面の間、初診予約の受付を停止しております。
大変申し訳ございませんが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
専門外来
認知機能外来
内容 | アルツハイマー型認知症をはじめ、様々な認知症の診断や治療、認知症に伴う周辺症状(BPSD)の治療も行います。また、軽度認知機能障害(MCI)のようなごく軽い認知機能の低下に関しても詳しい検査と診断を行います。患者さんのケアのみならず、ご家族の心のケアも丁寧に行っています。 |
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診察日 | 火曜日午前・午後、木曜日午前・午後、土曜日 |
担当医師 | 宮川 晃一 |
リエゾン外来
内容 | 身体疾患を持った精神的悩みを抱えた患者さんの治療を、各診療科と密に連携をとりながら行う総合病院ならではの専門外来です。身体疾患に関する知識を豊富に持った医師が担当し、スムーズな連携医療を行います。 |
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診察日 | 火曜日午後、木曜日午前、金曜日午後、土曜日 |
担当医師 | 市川 朝也 |
患者さんへのお願い
受付時刻順で診療を行っていますので、待ち時間が長くなることがあります。ご理解、ご協力をお願いいたします。順番やおよその待ち時間については外来のホワイトボードに掲示いたしますが。ご不明の点は外来看護師にお尋ねください。
入院診療
診療方針
当院には精神科専用入院病床はありませんので、身体科の一般病床を使用して入院治療を行います。したがって一般病床で治療、管理が可能な病状が入院治療の対象になります。精神科専門入院病床での治療が必要な場合には順天堂附属病院の越谷病院や臨床関連病院にご紹介させていただきます。また、修正型電気けいれん療法も行っております。
また当科での入院治療は短期(2週間)が適応で、長期療養の環境ではありません。長期間の入院治療が必要な場合には長期に療養可能な病院へご紹介させていただきます。
診療体制
入院中は入院担当医が治療を担当し、病棟医長が全体を管理します。毎週月曜日に総回診を行い検査、治療方針を検討します。
患者さんへのお願い
入院中は入院担当医が治療を担当しますが、外来診療などで不在の場合があります。毎日病棟担当医が病棟回診をいたしますので、ご要望は遠慮なくお申し出ください。
スタッフ紹介
科長補佐
宮川 晃一
(准教授)
経歴 | 1995年 順天堂大学医学部卒業 2010年 順天堂大学浦安病院メンタルクリニック科科長補佐 |
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専門 | 臨床精神医学、老年精神医学、精神薬理学、精神生理学、精神療法 |
資格 | 医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会 精神科専門医・指導医、日本認知症学会 専門医・指導医、日本老年精神医学会 専門医・指導医、日本総合病院精神医学会 一般病院連携精神医学専門医・指導医、日本医師会認定産業医 |
常勤医師
職位 | 氏名 | 出身大学・専門分野・その他 | |
助教 | 宮田 真美子 | 東海大卒(1999年卒) 【専門】臨床精神医学、緩和精神医学 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医 日本サイコオンコロジー学会認定 登録精神腫瘍医 |
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助教 | 市川 朝也 |
旭川医科大卒(2012年卒) |
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非常 勤医師 |
江渡 江 | ||
非常 勤医師 |
久保嶋 哲郎 | ||
臨床 心理士 |
金森 由和 | ||
臨床 心理士 |
森川 あずさ | ||
臨床 心理士 |
布施 利穂 | ||
精神保健 福祉士 |
田島 裕子 |
学会活動/認定施設など
2020年度
学会発表
- 古田あずさ,布施利穂,金森由和,田島裕子,月山智美,市川朝也,宮田真美子,宮川晃一:総合病院精神科におけるCOVID-19対応スタッフへのメンタルケア活動の報告.第33回日本総合病院精神医学会総会,Web開催,Nov,2020
総説
- 宮川晃一:リエゾン精神医学における自殺企図-患者の将来を見据えて-.臨床精神医学雑誌50巻2号Page149-157(2021.02)
- 宮田真美子:がん患者の疼痛、せん妄に対する精神科医のかかわり.臨床精神医学雑誌50巻2号Page159-164(2021.02)
院外講演
- 宮田真美子:病棟における不眠症診察と睡眠薬選択.エーザイ株式会社社員向け勉強会,Jun,25,2020
2019年度
学会発表
- 布施利穂,岩波孝穂,田島裕子,宮川晃一:総合病院精神科における「オープンダイアローグ的対話実践」の取り組みと展望.第24回千葉総合病院精神科研究会,千葉,2019,Apr,13
和文原著
- 布施利穂,岩波孝穂,田島裕子,宮川晃一:総合病院精神科における「オープンダイアローグ的対話実践」の取り組みと展望.総合病院精神医学雑誌31巻3号Page349(2019.07)
認定施設
当科は日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、日本老年精神医学会、日本認知症学会の研修認定施設で、同学会の専門医・指導医がおりますので、専門医になるための指導が受けられます。
紹介してくださる先生方へ
当科の外来は、月曜日から土曜日まで開設しておりますが、人員不足のため2020年4月より当面の間、初診予約の受付を停止することとなりました。予約受付再開の目途が立ちましたら当院ホームページでお知らせする予定です。しかしながら、当院での診療や検査が必要な患者さんの場合に関しましては、一度当科外来受付にご連絡ください。大変申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようよろしくお願い申し上げます。精神科救急につきましても、精神保健指定病床のない当院ではお受け入れできません。東京都、千葉県とも公的な夜間救急システムを構築しておりますので、公的機関にご相談ください。
研修医の先生へ
順天堂大学浦安病院 メンタルクリニック
専門医・専攻生コース 後記臨床研修カリキュラム
概要
順天堂大学浦安病院メンタルクリニックでは自立した精神科医となるための基礎的な研修を行い、厚生労働省が定める精神保健指定医の資格を得る準備を行っている。研修の場は当院以外の医学部附属病院あるいは臨床関連病院も含む。
専門医資格
- 日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、日本老年精神医学会、日本認知症学会 専門医制度認定施設
- 精神保健指定医、日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、日本老年精神医学会、日本認知症学会 専門医資格取得を目指す。
研修方法
- 1年目は当院で、主として総合病院精神医学を研修する。当科入院患者の担当医となり、治療に必要な基礎知識と診療技能を学ぶ。また、外来に陪席し外来診療の基礎を学ぶ。
- 2年目は、順天堂医院にて有床総合病院精神科での身体合併症治療を、順天堂大学越谷病院にて精神疾患一般に対する急性期・慢性期の治療を、順天堂大学東京江東高齢者医療センターで認知症の治療を研修する。基本的には4ヵ月を1単位として各施設で研修する。
- 3年目は臨床関連病院に常勤として勤務し、精神保健福祉法のもとで外来から入院まで担当することにより自立した実践的精神科医を目指す。
- 4年目は医学部附属病院あるいは臨床関連病院で臨床経験を重ね、精神保健指定医、日本総合病院精神医学会専門医の申請に備える。
総回診・カンファレンスなどのスケジュール
総回診は毎週月曜日の午後に行い、症例検討会を原則として第3月曜日の午後に行う。