乳房再建
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- 皮膚がん・軟部肉腫・皮膚腫瘍・皮膚外科
- 顔面骨骨折
- 難治性潰瘍
- 眼瞼下垂症
乳房再建術について
乳房再建術とは、乳がん手術により失われた乳房や形の変わってしまった乳房を再び取り戻す手術で、以下の様なメリットがあります。
- 乳房の喪失感が解消される
- 「今までと同じ洋服」や「胸の開いた洋服」を着ることができる
- 水着でプールに入れる
- 温泉旅行など入浴時の気持ちが楽になる
乳房再建のタイミング
乳房再建を行う時期により、以下のような呼び方があります。
- 一次再建…乳がんの手術と同時に行う再建手術
- 二次再建…乳がんの治療が一段落ついた頃に行う再建手術
乳房再建の方法
乳房再建の方法は、大きく分けて、自家組織(患者さんの身体の一部)による再建と組織拡張器(以下、エキスパンダー)を用いた人工乳房(シリコンインプラント)による再建があります。
代表的な乳房再建の流れをご説明します。
1. エキスパンダーを胸の筋肉の下に埋め込みます
当院乳腺・内分泌外科にて乳房切除術を行った後、当科にバトンタッチをして再建を行います。過去に乳房切除術を受けられている方は、当科で入院し手術を行います。手術の後は、数週に一度外来でエキスパンダーに生理食塩水を注入します。拡張は、反対側の乳房よりある程度大きくなるまで行います。拡張の終了後、伸展された皮膚や周りの組織が落ち着くのを待ってから乳房再建を行います。自家組織、あるいは人工乳房(シリコンインプラント)のどちらかの方法で再建を行いますが、ご希望を含め外来で相談させていただきます。
2. 自家組織による再建
大きく分けて、背部を使用する方法(広背筋皮弁)と下腹部を使用する方法(腹直筋皮弁)があります。
①広背筋皮弁
背中~腰の皮膚、脂肪、筋肉の一部を移植する方法です。
以下の患者さんに向いています。
- 将来妊娠出産の予定がある方
- 乳房が中程度まで方や部分切除後の再建の方
- 腹部に手術の傷跡があり腹直筋皮弁が使用できない方
背部に直線状の傷が残ります。
②腹直筋皮弁
下腹部の皮膚、脂肪、筋肉の一部および血管を含めて移植する方法です。
以下の患者さんに向いています。
- 乳房の大きな方や下垂の強い方
- 定型的乳房切断術後の方で大きな組織が必要な場合
*下腹部に横方向の傷が残りますが、下着に隠れるように配慮しています。
*血管を切って繋ぐ手術を行う場合、繋いだ血管が詰まると移植した皮弁が壊死する可能性があります。その場合には、他の方法で再度再建を検討する必要があります。
乳がん手術後(再建前)
自家組織移植による再建手術後
3. 人工乳房(シリコンインプラント)による再建
全回の胸の傷からエキスパンダーを取り出し、シリコンインプラント(スムースタイプ)に入れ替えます。
手術時間は2時間程度で、入院期間は1週間~10日程度です。
良い点
他の部分に傷が残りませんので、お身体の負担が少なくなります。
悪い点
人工物のため、感染や被膜拘縮、位置移動といった合併症の可能性があります。特に感染を生じた場合には、摘出する必要があります。
自家組織と比べ、異物感が残り、形態も限られます。10年ほどで、入れ替え手術が必要になるとされています。また、放射線治療後など皮膚の伸展性が十分でない場合や大きく下垂した乳房などの場合には、お勧めできないことがあります。
人工物周囲の被膜から悪性リンパ腫(BIA-ALCL)を生じる可能性があります。乳癌とは異なるがんを新たに生じる可能性があるため、定期的な経過観察や画像精査が必要になります。
【アラガン・ジャパン社からの人工乳房(ナトレル410ブレスト・インプラント及びナトレル133ティッシュ・エキスパンダー)に関する自主回収・販売停止に伴う当院の対応について】
2019年7月25日付で、アラガン・ジャパン社より「ナトレル410ブレスト・インプラント及びナトレル133ティッシュ・エキスパンダーに関する自主回収・販売停止」について通知がありました。
アラガン・ジャパン社からの通知
ナトレル自主回収のお知らせ(PDFファイル)
当院では、本通知に対して以下のとおり対応いたしますのでお知らせいたします。
- 対象となる方
当院において当該製品を用いた乳房再建手術を受けられた方 - 対象となる期間
2014年4月から現在に至るまで - 当院の対応
(1) 定期的に当院を受診されている方は、次回外来を受診ください。
(形成外科・再建外科,乳腺・内分泌外科)
(2) 定期的に受診されていない方、ご心配のある方は、当該科外来にお問い合わせください。 - 日本形成外科学会からの緊急声明
去る7月24日アラガンジャパン社から乳房再建用のティッシュエキスパンダーとテクスチャードインプラントの販売停止が発表されました。これは米国FDAの指示によりアラガン社がグローバルに指示を出したことによるもので、乳房再建において保険適用となっているインプラントが同社製品しかないわが国においては、重大な事態になったと認識しております。 本学会としては関連学会、アラガンジャパン同社ならびに関係省庁と緊密に連絡をとって対処していく所存です。今後の対応につきましては決まり次第、逐次ホームページに掲載して参りますのでご理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
<お問い合わせ先>
形成外科・再建外科外来もしくは乳腺・内分泌外科外来
※受診科にお問い合わせください。
日時:月曜日~金曜日 14:00~16:00
電話:047(353)3111 代表
2019年7月27日
2019年8月5日
4. 乳頭乳輪再建
乳房再建の後、傷が落ち着いてから手術を行います。反対側の乳頭、乳輪を移植する方法や再建乳房の一部を細工し、大腿部から皮膚を移植する方法、刺青(タトゥー)をする方法などがあります。どの方法にするかは、反対側の乳頭、乳輪の大きさや再建乳房の皮膚の状態、患者さんのご希望で選択をします。入院をしていただく場合と日帰り手術の場合があります。
皮弁による乳頭再建術
乳房再建のご希望がある方、あるいは、乳がん手術をすでに終えられ再建のご希望がある方など、どうぞお気軽に当科外来までお訪ねください。
※火曜日午後に乳房再建の専門外来を設けています。完全予約制のため、ゆっくりとご相談いただけます。