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JUNTENDO UNIVERSITY URAYASU HOSPITAL

TOPICS トピックス

2021年08月17日(火)

腎・高血圧内科・泌尿器科

慢性腎不全患者さんへのトータルマネージメント

当院では、腎代替療法のすべての選択肢(血液透析腹膜透析生体腎移植術)を選択いただけるようになりました。

患者さんの年齢、生活背景などを鑑みて、患者さんとそのご家族、医師、看護師が共に、共同意思決定(SDM: shared decision making)をしていくことが可能になりました。

腎臓は血液中の余分な老廃物や水分を尿として排泄したり、電解質(ミネラル)のバランスを調節しています。腎臓の働きが低下し末期腎不全になると、本来尿中に排泄される老廃物や水分などが体内に蓄積することで尿毒症や心不全になるため、機能の低下した腎臓の代わりに透析療法血液透析および腹膜透析)や腎移植などの腎代替療法が必要になります。

 

<血液透析>

血液透析とは、血液中にある老廃物を体外で人工的に浄化する治療法です。図1に示すように、血管に2本針を刺し、血液をダイアライザーと呼ばれる浄化装置に流します。血液から不要な老廃物や水分が除去し、血液中のミネラル成分が調節されます。浄化された血液は再度体内に戻します。一般的には週3回血液透析施設に通院していただき、1回の透析時間は3~5時間です。しかし、週3回の血液透析療法だけでは身体の状態を正常に保つことはできないので、食事(水分・塩分・カリウム・リンなど)の制限や内服薬の服用はしっかりと守る必要があります。


図1

血液透析を行うためには、一度にたくさんの血液が必要になります。そのため血液量が十分とれるような血管(内シャント)を人工的に作成する手術が必要です。内シャントとは、患者さん自身の動脈と静脈を皮膚の下でつなぎ合わせ、静脈に流れる血液の量を増加させる方法で、一般的には腕に作成します(図2)。局所麻酔で行い、手術時間は1時間前後です。患者さんの血管の状況によっては、人工血管を用いた内シャント作成や動脈の表在化を行うこともあり、またカテーテルを使用して血液透析を行うこともあります。


図2

<腹膜透析>

患者さん自身の腹膜を使って、体内で血液をきれいにする治療法で、患者さん自身で行います。お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の余分な老廃物や水分が透析液側に移動します。その透析液を体の外に出す(排液)ことで血液をきれいにします(図3)。

透析液をお腹の中に出し入れする直径5~6mmほどの専用チューブ(カテーテル)をお腹の中に埋め込みます。カテーテルの端は体の外に出しておきます(図4)。透析液の出し入れには1回あたり30分程度かかりますが、自宅や職場で行うことができ、外来通院は月に1~2回と少なくて済みますので、社会復帰がしやすいと言われています。


図3


図4

腹膜透析には以下の2通りのやり方があります。

①CAPD(continuous ambulatory peritoneal dialysis 持続携行式腹膜透析)
 6~8時間ごとに透析液のバック交換を行います(1日3~4回程度)(図5)。

②APD(automated peritoneal dialysis 自動腹膜膜透析)
 日中のバック交換をなくし、1日1回、夜間寝ている間に機械を使って自動的に透析を行う方法です(図6)。


図5


図6

<生体腎移植術>

慢性腎不全のために血液透析や腹膜透析などを必要としている方に行います。左あるいは右の下腹部(腸骨窩)に約20cmの斜切開をおき、提供された腎臓の動静脈をそれぞれ同部の腸骨動静脈などと吻合し、尿管は膀胱と吻合します。移植手術中に尿が出ることがほとんどですが、尿流出が不十分な場合は、透析をしながら尿の出るのを待ちます。経過が良好な場合、術後3~4週程度で外来通院となります。

〔腎移植術の重要な合併症〕

・ 尿管狭窄、尿瘻
 尿の流れが悪くなったり、尿が尿路外に漏れたりすることがあります。ステントを留置したり、再手術をして修復したりする必要があります。

・ 腎動脈狭窄、腎静脈血栓症
 腎臓への血流が不十分な場合や腎静脈に血栓が生じることがあります。移植腎機能低下につながる重大な合併症ですので、早急な処置が必要です。

・ 急性拒絶反応
 移植後早期が最も危険な時期です。尿量や採血結果などにより拒絶反応が疑われた場合、移植腎針生検が必要な場合があります。近年の免疫抑制剤の進歩により、多くの場合で十分な治療が可能です。

・ 慢性拒絶反応
 外来通院中に徐々に拒絶反応が進行していく場合があります。移植腎針生検後に、免疫抑制法の検討が必要です。

・ 腎炎など原疾患の再発
 自己腎を悪化させた原疾患が移植腎にも生じる場合があります。

・ 感染症
 免疫抑制剤使用のために、抵抗力が落ちており種々の病原微生物による感染症が生じることがあります。定期的な観察を行って早期に診断し治療することが重要です。

 

【お問い合わせ先】

血液透析、腹膜透析:腎・高血圧内科外来

生体腎移植術:泌尿器科外来

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