• 交通アクセス
  • 文字サイズ標準

診療科・部門のご紹介

MEDICALCARE

新しい植込み型除細動器、皮下植込み型除細動器(S-ICD)

当科は、2016年初頭より使用可能となった皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込み手術の施設認定をいち早く取得し積極的に行っております。S-ICD植込み手術は2016年3月より開始しておりますが、9月末でこれまでに6症例に手術をさせて頂き、当科中里教授はトレーナーの資格を得ています。また全症例合併症なく手術は終了し、経過も良好です。

 除細動器は、内服治療では完全に予防できず発生すると瞬時に血圧低下を来し意識を失い放置すれば生命に関わる心室頻拍、事実上心停止となる心室細動の治療のための医療機器ですが、これを体内に埋め込んだものが植込み型除細動器(ICD)です。ICD は、不整脈を診断・記録したり治療のため電気ショックを発生するICD 本体と心拍を感知し本体に伝え電気ショックを本体から心臓に与えるリードで構成されます。(図-1)。

 心室頻拍や心室細動が発生するとICD は迅速にそれを診断し、電気ショックでこれらの不整脈を停止させます。このICDは経静脈式と称し、ICD 本体は鎖骨の下の皮下に埋没させ、リードはレントゲンをガイドに鎖骨下静脈→上大静脈の静脈ルートを通過させ心臓内に留置ますが、このため非常にまれではありますが肺や心臓までの静脈ルート、心臓にリードが損傷を与える合併症(血気胸、心穿孔、心タンポナーデ等)想定され、手術後の感染が全身感染症(感染性心内膜炎)に発展することが稀ではありますが起こりえます。

 皮下植込み型除細動器(S-ICD)は新しいタイプの除細動器で、ICD 同様、S-ICD 本体(図-2)とリードと本体で構成されますが、心室頻拍・心室細動を平均約20 秒で感知・診断し、その停止のため電気ショックを心臓に与えます。

 図-1:経静脈植込み型除細動器(ICD)                     図-2:皮下植込み型除細動器(S-ICD)

 S-ICD 本体は左側胸部の皮下に植込みます。一方、リードは本体から逆L 字型に左下胸壁から胸壁中央を上方に向けて皮下に植込むことがICD と大きな相違点です(図-3)。このためICD のように心臓までの静脈ルートや心臓にリードが損傷を与える合併症は発生せず、全身感染症も極めて稀です。
図-4にS-ICD術後の胸部レントゲン写真を供覧します。

 ICD とS-ICD では治療の有効性には差はありませんので、今後は患者様に適した除細動器を選択する必要があります。除細動器植込み手術が必要な患者様は当院の3名の日本不整専門医医師の説明をもとに適切な選択を行ってまいります。

 図-3:皮下植込み型除細動器(S-ICD)本体(患者様ご説明用)

003
004

図-4:S-ICD患者様のレントゲン写真(許可を頂き掲載しております)