ごあいさつ
2023年4月より整形外科の科長代行に就任いたしました。
整形外科は運動器(身体を動かすために必要な器官のこと。背骨や腕や脚がこれにあたります。)に生じた問題を担当する診療科であり、生涯を通じて皆さまと関わる機会が非常に多い診療科です。生後間もない時期には、発育性股関節形成不全(以前は先天性股関節脱臼と言いました。)や内反足、筋性斜頸などが、幼児期〜小学生〜中学生の時期には成長期特有の疾患(オスグッド病などの骨端症)があり、スポーツ障害(野球肘など)が生じ易い時期でもあります。高校生〜大学生になるとスポーツに伴う外傷(膝靭帯損傷、疲労骨折など)が多くなります。成人してからのしばらくの間は整形外科的疾患が比較的少ない時期ですが、壮年期を過ぎますと徐々に加齢に伴う変化が運動器に生じてまいります(変形性関節症や椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、五十肩など)。そして、老年期に入りますと加齢性変化の進行とともに骨粗鬆症が生じ、骨粗鬆症に伴う骨折が急激に増えてまいります。加齢に伴う足腰の筋力低下やバランス機能の低下に伴う転倒し易さも骨折の増加に関与しており、老年期は皆さまの生涯の中で最も整形外科が関わることが多い時期となります。
当科では、このような疾患や怪我に対して、脊椎、肩関節、手・肘、股関節、膝関節、スポーツ整形外科、骨折や重度外傷治療のそれぞれの分野で研鑽を積んだ医師が、最も適切と思える治療を提案し、安全で質の高い医療を提供しています。
プロフィール
順天堂大学1989年卒
【専門分野】股関節外科、ロコモーティブシンドローム
【取得資格】日本専門医機構整形外科専門医(日本整形外科学会認定専門医)、日本人工関節 学会認定医、日本整形外科学会リハビリテーション専門医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本体育協会 スポーツドクター、学会認定自己血輸血責任医師
整形外科およびスポーツ医学センターにて、PRP(多血小板血漿)療法を開始しました。
PRPとは、患者さんの血液中の成分である“血小板”に含まれる成長因子などのタンパク質の作用を利用した再生医療です。血液には成長因子などの良いタンパク質と炎症や軟骨破壊を促進する悪いタンパク質が一緒に含まれています。PRP療法では、成長因子を多く含む血小板と細胞の栄養素などを含む血漿を悪いタンパク質を含む赤血球から分離することで、血液のもつ治癒作用を高めて治療に利用します。自己治癒力をサポートする治療法として、ヨーロッパやアメリカでは頻繁に行われています。
【治療の流れ】
- 採血
- 血液を遠心分離し、PRPを抽出
- PRPを患部に注射
【主な対象疾患】
慢性関節炎(変形性膝関節症・肩関節周囲炎・腰痛など)、スポーツ外傷・障害(靱帯損傷・肉離れ・腱炎など)など
【効果】
当院では、これまで順天堂大学でPRP療法を行っていますが、効果がある方は全体の約60%程度です。ご自分の血液を使うため、血小板の活性が高い/低いなどの因子が効果に影響を及ぼすのではないかと考えられていますが、まだ明らかにはなっていません。また、関節の変形や腱板断裂の程度が重症な方ではPRP療法の効果が低下します。
【副作用】
PRP療法によって起こる副作用は少ないですが、筋肉や腱などの組織に直接針で刺してPRPを注入するため、治療中と治療後に痛みを感じることがあります。しかし、関節内に対するPRP療法では痛みを感じることはあまりありません。
【メリット】
- 身体への負担が少ない
患部へ注射のため、手術に比べ負担が少なく、若年者から高齢者まで年齢に関わりなく治療を受けることができます。 - 副作用が少ない
自分の血液を利用するため、副作用を引き起こす可能性が低いです。
【デメリット】
- 自由診療のため金銭的負担が大きい
- 治療効果に個人差がある
【費用とスケジュール】
PRP療法は、日本ではまだ保険診療として認められていません。そのため、治療を受ける方は自由診療となります。当院での一本のPRP注射にかかる費用は現在33,000円(税込)(肩や肘関節は1本ですが、膝関節の場合は2本使用するので66,000円(税込))です。PRP療法は再生医療のひとつですが、先進医療や高額医療の補助の対象とはなりません。PRP療法実施日の痛み止めや湿布の処方、および検査もすべて自費となりますのでご注意ください。
PRP療法を行うかどうかは当日の状態によって担当医と患者さんがご相談の上で最終決定いたします。治療を行ってから約3ヶ月後(治療開始から半年)に、痛みがどれくらい取れたか、生活がどれくらい改善したかを評価します。効果が認められた方では2回目のPRP療法を行う方もいらっしゃいます。
残念ながら効果がなかった方は、関節鏡下手術や人工関節置換術などの手術加療を行う事も可能ですので担当医にご相談ください。
整形外科の湯浅崇仁准教授が「Best Doctors in Japan 2020-2021」(ベストドクターズ社)に選出されました。
整形外科 准教授
湯浅 崇仁
【専門】股関節外科
【専門医】日本整形外科学会認定専門医・運動器リハビリテーション医
2020年度から、順天堂大学の医学部とスポーツ健康科学部は、千葉ロッテマリーンズの選手たちが年間を通してパフォーマンスを発揮できる環境づくりに協力することになりました(詳細はこちら)。すでに医学部附属病院である順天堂医院と当院を中心に選手へのメディカルチェック、スポーツ健康科学部での体力測定などが実施されています。詳しくはこちらをご覧ください。