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MEDICALCARE

先天性巨大色素性母斑

【閲覧にあたり、ページ内の一部に疾患の状態や手術中の様子を示す写真が含まれることをご留意ください。】

先天性巨大色素性母斑について

先天性巨大色素性母斑とは

生まれつきある大きな黒いアザのことです。
一般的に成人で直径が20cm以上、乳幼児の場合は頭部で直径9cm以上、体幹で直径6cm以上の色素性母斑が巨大とされています。
母斑の黒色は母斑細胞が作り出すメラニン色素が原因です。母斑細胞は主に表皮と真皮の境界や真皮の中に存在しますが、皮膚中枢神経系にも母斑細胞が存在するケースもあります。
先天性巨大色素性母斑は悪性黒色腫(メラノーマ)発症のリスクが高い(3%程度)とされており、早期に母斑を切除することが望ましいとされています。

先天性巨大色素性母斑の治療法

治療には様々な手法があり、母斑の大きさや局在によって、メラノーマのリスク、整容面を考慮しながら治療を進めます。
治療法には、自家培養表皮、ドライアイス圧抵、キュレッテージ、分割切除術、レーザー治療、ティッシュエキスパンダー、植皮術を用いた方法などがあります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、母斑の大きさ、部位等を考慮し治療法を選択していくことになります。複数の治療法を組み合わせて行う場合もあります。

治療法1【自家培養表皮】

自家培養表皮は、患者さん自身の皮膚から取り出した表皮細胞を体外で培養して表皮細胞のシートを作製し移植する方法です。
切手大サイズの皮膚から全身を覆えるほどの表皮細胞シートを3週間程度で作製することが可能です。
日本では自家培養表皮ジェイスが先天性巨大色素性母斑、重症熱傷、表皮水疱症に対して保険適応となっています。
小さな皮膚から培養し、広い面積を治療できることがメリットですが、移植した後の肥厚性瘢痕などの課題もあります。

自家培養表皮を使った治療の流れ
  • 皮膚の採取:手術室で1~3㎠程度の皮膚を採取します。
  • 培   養:採取した皮膚を培養する会社に運び3週間以上かけて培養します。
  • 移   植:母斑の部位を削り培養表皮を移植します。
  • 移 植 後:移植後2週間ほどは安静にします。数週間ほどで培養表皮が着き、創が閉鎖されます。

J-TECより提供

培養表皮移植による実際の治療例(広範囲の場合)

他部位からの植皮術も有用ですが、全身性などの広範囲の場合には、培養表皮を用いた治療が試みられています。

切除デザイン

切除病変

培養表皮移植時

術後約2年

こどものあざとできもの ―診断力を身につけるー 企画・編集:林礼人/大原國章、全日本病院出版,2020 より

治療法2【ドライアイス圧抵療法】

ドライアイスを母斑組織に押し当て、母斑細胞を死滅させる治療法です。
少し強めに当てる必要があり、表面に水ぶくれが出来たり、1~2週間は染み出しが続く場合があります。
何度も繰り返す必要があり、比較的軽度な瘢痕を生じることもあります。まだらに色抜けする形になりますが、侵襲が少なく小さな病変には効果的な治療法のひとつです。

治療法3【キュレッテージ】

生後間もない期間では、母斑とその下の部分の間に比較的簡単に剥がすことが出来る層が存在します。そこで、母斑組織を鋭匙(エイヒ)という器械を使って剥がし、母斑を剥がした後は自然に皮膚が張ってくるのを待ちます。
皮膚を移植する必要はありませんが、瘢痕として傷跡が残存します。また、母斑の色が残ったり、再発したりする可能性もあります。生後早期に母斑細胞を減らした上で、将来的に傷跡に対する手術を検討します。

治療法4【分割切除術】

母斑を何回かに分けて切除し、縫い縮める方法です。
切除術の間隔は半年~1年あけ、切除後の傷跡が柔らかくなってから次の手術を行います。
最終的に、縫合線が1本の目立ちにくい線になる様に工夫しながら切除を計画します。一度では取り切れないものの切除を可能にしたり、一度で切除するよりも縫合線を短く出来るため整容面に優れるといった利点があります。
ただし、切除可能な大きさには限度があり、時間を要します。

治療法5【レーザー療法】

母斑の部位にQスイッチルビーレーザー、エルビウムヤグレーザー、V-Beamレーザーとの同時照射など、母斑の状態に応じたレーザーを選択して照射し色を薄くしていきます。他の治療に比べ侵襲は少なく、縫合した傷跡が出来ない利点があります。
しかし、何度も繰り返し照射する必要があり、深くまで母斑細胞が存在する場合には治療が難しく、色の残る場合が多いです。

治療法6【ティッシュエキスパンダー】

皮膚の下にシリコン製の風船を入れて膨らませ、徐々に皮膚を伸ばし、伸ばした皮膚を植皮を利用して母斑を切除した部分をカバーする方法です。
整容的にも優れた方法ですが、膨らますのに時間を要し、定期的な通院が必要になり、挿入部の管理も必要になるため、乳幼児期の治療には向きません。

顔面瘢痕治療例
こどものあざとできもの ―診断力を身につけるー
企画・編集:林礼人/大原國章 全日本病院出版,2020 より

治療法7【植皮術】

母斑の部分を切除した上で、正常な部位の皮膚を取って移植する方法です。
分割切除で対応できないような大きな母斑でも治療可能で、以前から行われていた手法になります。植皮した部分は周囲と比べて色味や質感が異なり、皮膚を取った部分も傷跡として残るため、取る部位への配慮も必要になります。

分層シート植皮術

術後所見